春 Ⅱ

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ハルとの出会いから数週間、僕は毎日の様に彼女の黒い世界へ身を投じていた。 いくら話してもハルがああなってしまった理由は知ることはできなかったが今となってはどうでもいい。 彼女と話すことはたわいのない話から一般人では理解できない話題まで……例を言えば学校の食堂のメニュー、最近近所にできたカフェ、中世ヨーロッパの拷問器具や世界中の死刑方法……。 彼女は非常に好奇心が旺盛なようで、自分の知らない話を持ちかけたら今日は帰れと僕を追い返し、翌日になればその話を深く語れるほどにまで知識をつけている。だから飽きないのだ。 今だ顔も知らぬ彼女と話すのはA子と話すより充実した。まあA子なんて視界に映ってこそいない。
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