春 Ⅱ

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「どうって……別にどうも」 「わたしは外を知りません。 本当に、2年間は外に出ていません。 自分の姿も……思い出せない見てないから、……手ぐらいは見えますけど」 そう言うとハルは僕からコップを取り上げ自分の手を握らせた、相変わらずの手袋。 「それがどうした?」 「あなた」 「ん?」 「わたしの顔を、触って」 「は……何を……!?」 今度は僕の手を握り、誘導。 指先が自分のとは違う温度を感じる、もう僕の手の平はハルの輪郭を乗せていた。 「ぁ……」 女に触れるのは初めてだ、躊躇していた僕も最初は片手だったのに今や両手を使ってハルに触れていた。 輪郭をなぞる、小顔。 髪をとく、とても長い髪。 睫毛に触れる、左の方が長い。
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