プロローグ

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~覇王ベンチ~ 「うぬら、すまなかった。 わしが打たれなければ負けることはなかったろうに…」 覇王はベンチに帰るなり、うなだれた。 「そうだ!  お前さえ打たれなければ100%勝ててたんだよ。  しっかり抑えろよなバーカ。」 「な…わしだって打たれたくて打たれたんじゃないわい! これでもいつもより精一杯…」 「とでも言うと思ったか?」 「!?」 竜ヶ崎の突然の態度の変化に、覇王は驚いた。 「大体なぁ、160kmの速球とキレのある変化球、しかもナックルも放れるお前がそう簡単に打たれる訳がねぇだろ?」 この言葉に鷲山も続く。 「そうだぞ。  竜ヶ崎の言う通りだ。  お前のその球が打たれるってこたぁ、相手のが上手だったってこったろ。  何もお前が謝るこたぁねぇよ。  大体お前を援護出来なかった俺らも悪いんだからな。」 「うぬら…」 「まぁ、今日はちょっと腹痛かったから俺は悪くないがな。」 「よく言うぜ虎ヶ岳。」 「あれ?そう言う鬼塚はヒット打ったっけか?」 剣山が突っ込む。 「えっとなになに…ショートゴロ、ライトフライ、三振…」 「あぁぁあああおおぁおおぉあ~」 熊田が成績を確認し始めた途端、鬼塚は耳を塞いで大声をあげた。 それを見ながら黒岩はのんきに笑っていた。 馬場は戸惑っている覇王の元に近づき、 「ほら、こいつら全然悔しがってねぇじゃないか。  むしろ嬉しがってるじゃないか。  こいつらは―まぁ俺もだが―大バカだから、試合やれるだけで飛び上がりたくなるほど嬉しいんだよ。  ほら、お前も突っ立ってないで何か言うことあんだろうが。キャプテンとしてな。」 こう言われた覇王は涙が出そうになるのを堪えながら、怒鳴るように言った。 「うるあぁぁぁ!  うぬらは何を騒いでおるのだ!  とっとと帰ってこれから猛特訓じゃ!  来年の六月の大会に負けたら承知せんからなぁ!」 そしたら騒いでいたやつらが全員静かになり、声を揃えてこう言った。 「おう!」
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