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あるはずがない、あってはならないと思っていたことが現実になるのは、案外よくあることだったりする。その規模に大小の違いはあれど、「あるはずがない」「あってはならない」ことと言うのは決して「あり得ない」ことという訳では無い。
そんな当たり前のことを上之宮礼奈は考えたこともなかった。あるはずのないことは彼女にとってあり得ないことであり、それが起こる可能性などというものは一考に値しないものだった。…そう、あの日までは。
地球暦2XXX年のある日のこと。目覚めた彼女が見たのものは、コンピューターと作業ロボットが立ち並ぶ巨大な空間だった。人気の無い、寒気のする部屋。ひっきりなしに動き回る影はすべてロボットやアンドロイド。生きた人間の気配はまるで無い、冷たい場所だった。
礼奈は自分の置かれた状況が理解できなかった。確かその日礼奈は遠い星に移住していった叔母を訪ねてシャトルに乗る予定だった。ぼんやりと霞んだ記憶の隙間に、シャトルの座席が狭くて不快に思った記憶が浮かんでいる。そこまでは間違いのない真実のはずだ。
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