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「ね、聞いてるの？」
頭上から降る声にはあえて無視を決め込んだ。返答する気が起きない。どうせ相手はこちらが応えようが応えまいが、勝手に話し始めるのだから。
「もー！ゼロナちゃんはいっつもそうやって聞いてないフリするんだね」
いつもとは少し違った展開に顔を上げると、サラサラとした綺麗な髪を持つ少女が逆光の中に見えた。唇を僅か尖らせて不満そうな表情を見せる。彼女のその姿は、まるで人間そのものだ。
「ヒトの話はちゃんと聞かなくちゃなんだよー？」
「別に、メモリにはちゃんと蓄積されてるんだから好きに話してれば良いじゃない」
少女の非難する言葉に対し、彼女はつんとそっぽを向いて答えた。しかしそんな彼女の意思とは裏腹に、マイクの役割を果たすヘッドフォンの赤いランプが明滅している。システムが周囲の音声を察知し、自動録音を行っているのだ。
「そういうの良くないよ！学校卒業した後でそんな態度してたら、あっという間に捨てられちゃうんだから」
熱くなり、語調を強めて言い募る相手に、少女はため息をついてみせた。
「私はアンドロイドじゃないから関係ないわ」
「またそういうこと言う！ゼロナちゃんは私とおんなじアンドロイドでしょ！卒業したら、クライアントのところでお仕事するんでしょ！」
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