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「もともとハーツにはフレンドしか無かったんだ。高齢者、幼児、身体障害者、その他色々、人の手を借りなければならない人を助けるために作り出される人、それがフレンド」
ファンタジーなマンガを愛読する心優は、介護用ロボットのようなものを想像した。あながち間違いではない。
「フレンドの能力や性格は、バース機の使用者が思い描く通りになる。もちろん、現実離れした怪力や超能力なんかは無理だよ。現実にいる人間の限界までなら、あらゆる能力を持てるけどねっ」
「じゃあ、ボクのブレイドもボクの想像通りに生まれたんですか?」
心優は性格の合わないブレイドを作り出そうなどと思っていなかった、というよりまず、作り出そうという意識すら無かった。
「ブレイドも同じなんだけど、君の場合は誤作動から生まれた、誰の影響も受けていない特別なブレイドだからねー。あたしも初めての例だから、よく分かんないっ」
これからずっと心の中に居座られるかもしれない存在を、分からないの一言で片付けられては堪らない。
「とにかく、ハーツ社の最初の目的は、フレンドで人助けだった。でも、問題が発生しちってね」
常に笑顔のみらいなのだが、この時ばかりは眉間にしわが寄った。
「フレンドは条件を満たした人物に無償で提供される。至って健康、生活に何の問題も無い者には決して提供されない、はずだった」
「はずだった?」
「情けない話でさ、ハーツ社の製品管理部の奴らがバース機を横流ししてたんだ。それも一つや二つじゃない。世界中の富豪に売り飛ばしたみたい。バース機を使って、必要も無いのに召し使いや執事を作って遊んでる。ちょっと頭に来ちゃうなっ」
心優はどくんと胸が鳴った。富豪、執事と言えば、まさに当てはまる者がいる。健聖とレオンだ。
「そして、本当に問題なのはここから」
目的地の公園に着いた。砂場が一つにブランコが二つあるだけの小さな公園である。そのブランコに一人、メイド服を着込んだ金髪の美しい女性が座っていた。あまりに場違いで、心優は目をぱちくりとさせた。
「あれもフレンドだよ」
なんとなく察しはついていた。現実世界の人間で、金髪メイドがこんなところにいるわけも無い。都会ならその限りではないが、この辺りではまず有り得ないことだ。
「本当の問題、それは、捨てられたフレンドの野生化」
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