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メイドが二人に気付く。すると彼女は立ち上がり、にっこりと笑ってお辞儀をした。
「彼女は昨日の男みたいに襲ってこないね。マスターから離れてまだ間もない証拠だよ。仕事としてはやりやすい」
心優には動かずに見ているよう言い付け、みらいは自分の胸に手を当てた。すると、心優の胸から刀が現れたように、みらいの胸からも何か出てくる。
「やるよ、シャロン」
「はーい、ご主人!」
心優にはみらいの声しか聞こえない。そう、シャロンとは、みらいのブレイドの名前なのだ。みらいの胸から現れたのは、指の第一関節から上を覆う部分が無い手袋状のものだった。それを素早く装着したみらいは、つかつかとメイドに歩み寄る。
「何か御用でしょうか? なんなりとお申しつけ――」
メイドが言い切る前に、みらいは拳を握り固めて後ろに引いた。
「ごめんね」
ぽつりと悲しげに呟いた直後、みらいの鋭いストレート掌底打がメイドのみぞおちに叩き込まれた。それだけでない。なんとその掌底打は、メイドの体を貫いたのだ。
「なっ、なんてこと!」
心優が口を覆うのも無理は無い。殺人現場を見るようなものなのだから。しかしどうしたことか、メイドの体からは血が流れず、その体が光り始めた。次の瞬間、メイドは光の粉となってその形状を失い、みらいの懐にあるバース機に取り込まれた。
一部始終を見て唖然とする心優に、みらいは笑顔で振り返る。
「これがあたし達『友刃管理者(オーダーズ)』の仕事。野生フレンドの駆除だよっ」
「駆除って……、もしかして、昨日の男性も?」
「うん、君が気絶した後、同じように処理したよ」
パンパンと手を払い、手袋を外しながらみらいは淡々と言う。
「遊び半分で作り出したフレンドを、邪魔になった途端に捨てる輩(やから)がいるんだ。フレンドはマスターと一緒にいることで、心の安定を保つ。放っておくと野生化して、本能だけの獣に成り果ててしまうから、そうなる前に友刃管理者(オーダーズ)が野生フレンドを駆除するんだよ」
「酷い……」
酷い、と聞いてみらいが口をきゅっと結んだことに心優は気付いた。その時、みらいの手袋がバース機の作動した時と同じくまばゆく輝いた。思わず心優は目をつむり、光が治まってから開けると、
「ほんっと、ヒドイ話だにゃん」
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