ブレイドハート

11/26
前へ
/26ページ
次へ
 メイドが二人に気付く。すると彼女は立ち上がり、にっこりと笑ってお辞儀をした。 「彼女は昨日の男みたいに襲ってこないね。マスターから離れてまだ間もない証拠だよ。仕事としてはやりやすい」  心優には動かずに見ているよう言い付け、みらいは自分の胸に手を当てた。すると、心優の胸から刀が現れたように、みらいの胸からも何か出てくる。 「やるよ、シャロン」 「はーい、ご主人!」  心優にはみらいの声しか聞こえない。そう、シャロンとは、みらいのブレイドの名前なのだ。みらいの胸から現れたのは、指の第一関節から上を覆う部分が無い手袋状のものだった。それを素早く装着したみらいは、つかつかとメイドに歩み寄る。 「何か御用でしょうか? なんなりとお申しつけ――」  メイドが言い切る前に、みらいは拳を握り固めて後ろに引いた。 「ごめんね」  ぽつりと悲しげに呟いた直後、みらいの鋭いストレート掌底打がメイドのみぞおちに叩き込まれた。それだけでない。なんとその掌底打は、メイドの体を貫いたのだ。 「なっ、なんてこと!」  心優が口を覆うのも無理は無い。殺人現場を見るようなものなのだから。しかしどうしたことか、メイドの体からは血が流れず、その体が光り始めた。次の瞬間、メイドは光の粉となってその形状を失い、みらいの懐にあるバース機に取り込まれた。  一部始終を見て唖然とする心優に、みらいは笑顔で振り返る。 「これがあたし達『友刃管理者(オーダーズ)』の仕事。野生フレンドの駆除だよっ」 「駆除って……、もしかして、昨日の男性も?」 「うん、君が気絶した後、同じように処理したよ」  パンパンと手を払い、手袋を外しながらみらいは淡々と言う。 「遊び半分で作り出したフレンドを、邪魔になった途端に捨てる輩(やから)がいるんだ。フレンドはマスターと一緒にいることで、心の安定を保つ。放っておくと野生化して、本能だけの獣に成り果ててしまうから、そうなる前に友刃管理者(オーダーズ)が野生フレンドを駆除するんだよ」 「酷い……」  酷い、と聞いてみらいが口をきゅっと結んだことに心優は気付いた。その時、みらいの手袋がバース機の作動した時と同じくまばゆく輝いた。思わず心優は目をつむり、光が治まってから開けると、 「ほんっと、ヒドイ話だにゃん」
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加