1人が本棚に入れています
本棚に追加
フレンドを捨てるような者達がいることにショックを受けていた心優も、健聖のような者もいるのだと温かい気持ちになった。
「ちゃんと伝えましょう」
「心優……。ああ、そうだな!」
「そうと決まれば、早く見つけ――」
気付かなかった。二人の横に、金属バットを振り上げた男が迫っていることに。バットに太陽の光が遮られて初めて気付くも、逃げる時間は無く、バットは振り下ろされた。が、
「家に戻れって言ったはずなんだけど」
両腕をクロスさせてバットを受け止めたのは、みらいだった。バットを上方に弾き、繰り出すアッパーが男の顎を打ち抜く。のけ反り開いたボディに渾身のストレートを打ち込むと、メイドと同じように男は光と化して消えた。
「うっ!」
突然、みらいが右手首を押さえてうなった。金属バットを受け止めた箇所にズキズキと痛みが走る。
「み、みらいさん!」
「大丈夫、折れてないよ。でも参ったな。利き腕使わないでどこまで戦えるか……」
「すみません、ボクが言うことを聞かなかったばかりに!」
涙目で謝る心優に、みらいは柔らかな微笑みを見せた。
「友達思いだね、心優は」
心優の後ろで唖然とする健聖をちらりと見、みらいは腕をぶんぶんと振り回した。
「まだまだ行けるよっ! 今度こそ二人は家に戻るよーに」
「でも、レオンさんが……」
レオンとは誰だと訊く前に、みらいは掃除用具入れの中で聞いていた話を思い出した。
「そこの……健ちゃんだっけ? その子の執事だよね」
みらいは改めて健聖に向き、一瞬だけ地面に視線を落とした。それの意味するところを心優には察しがつけど、健聖にはさっぱりである。
「残念だけど、そのレオンって人は――」
「危にゃい、ご主人!」
みらいの手に装着されたシャロンが光り、同時に破裂音のようなものが響く。その瞬間に展開したそれ以外の状況を理解できた者はシャロンのみ。みらいの意思とは関係無く姿を現したシャロンは、間もなく膝から崩れ落ちた。
それを見たみらいが、シャロンにコンマ数秒遅れて動く。心優と健聖の間に走り込んだみらいは二人の胸部をラリアットのように押し、すぐそばの路地に三人で倒れ込んだ。残されたシャロンも四足歩行を駆使して同じ場所へ駆け込む。
「なんだ、何が起きたんだ!?」
慌てふためく健聖を完全に無視してみらいはシャロンを抱き寄せた。
最初のコメントを投稿しよう!