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気が付いた時、心優は見知った場所にいた。どこを向いても綺麗に整頓された、そこは心優の部屋。
「やっ、お目覚めだね」
見知った場所なのに聞き慣れない声がする。驚いて見ると、心優の寝かされていたベッドの横に先の少女が立っていた。
「ひぇっ、お茶、お茶出しますね!」
「びっくりするか気を利かすかどっちかにしなよ」
混乱してどうしたらいいか分からず素が出た心優に少女は苦笑した。それを見て心優はこの少女が自分を助けてくれたのだと思い出し、落ち着いて礼を述べた。
「にはは、いいってこと。あれがあたしの仕事だしねっ」
「仕事……?」
すると少女はにこやかな顔を急に真面目なものに変え、ずいと顔を近付けた。
「君はバース機を使ってしまい、やむを得なかったとは言えあたしの仕事を見てしまった。だから君は、これからあたしが話すことを全て聞かなければならず、そして誰にも話してはいけない」
言い終わったのか、しばらくそのままの顔で沈黙する少女。心優がなんと言ったものか迷っていると、少女は再び明るく破顔した。
「これ言うのがルールなんだっ。真面目だったでしょー、にはは」
対して心優はぽかんとして口を開ける。
「まずは自己紹介だねっ。あたしはハーツコーポレイション、通称『ハーツ社』の『友刃管理者(オーダーズ)』所属、飛羽(とびはね) みらいでっす!」
「……?」
意味の解らない単語を連発され、心優は黙って首をかしげる。最低限、この少女の名前が飛羽みらい、ということだけは聞き取ったが。
「ハーツ社はあたしが勤めてる会社、友刃管理者(オーダーズ)は役職名。まっ、今は覚えなくていいやっ」
とその時、部屋のドアをこんこんと叩く音がした。心優が返事をすると、心優の母親が心配そうな面持ちで入ってきた。
「心優、気が付いたのね。よかったわ。気を失ったあなたをそこの飛羽さんが運んでくれたのよ。お礼は言ったの?」
自分が無事であることと、今からみらいと話があることを伝えると、母親は頷いて部屋から出た。みらいは母親に、不審者は警察に捕まったから安心だと伝えてある。
「じゃ、一番重要な話をしよっか。これ見てまた気絶しないでね」
とおもむろにベッドの下へみらいが手を伸ばす。ごそごそと探り、取り出したのはなんと、心優の体から出現した純白の日本刀だった。それはいつの間にか、同じく白い鞘に収まっている。
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