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その日、みらいはそれ以上を言わなかった。心優としてもこれ以上の情報を頭で理解、整理するのは不可能であった。ところで、みらいは帰るのだろうと思い込んでいた心優は、
「泊まらせてもらいまっす!」
という台詞に意表を突かれた。母親には話が通っているらしく、心優の部屋で寝ることになっていた。
「あたしには、ブレイドを持った人を見守る役目もあるからねっ」
と言って胸を張った夜、みらいは床に寝そべった瞬間に寝息を立て始めたのだった。
朝、学校への通学路を二人は並んで歩いていた。学校にまでついてくると思っていなかった心優は、周りの友人に何と言えばいいのかを考えながら歩いている。ハーツ社だのブレイドだのと言う者をあまり友人には会わせたくない。健聖は喜びそうだが。
「大丈夫、クラスメートには見つからないようにするからっ」
何を言ってもついてくるのは確定のようなので、心優は苦笑を浮かべながら正門をくぐる。そこからみらいがダッシュで校内へ潜入するのを、心優は嫌な予感が脳裏をよぎるのと同時に見送った。
確かにクラスメートには見つからなかった。心優すらみらいがどこに潜んでいるのか分からない。もしや外の木の枝に乗っかってはいまいかとマンガ的に考えて見てみるが、いない。それならば掃除用具入れを恐る恐る開けてみる。
……いらっしゃった。
「にはは、見つかっち――」
バタンと扉を閉める心優に驚くクラスメート。
「ど、どうしたの、心優?」
「いえ、この掃除用具入れ、中から何か悲惨な臭いがしますから開けないで下さい、絶対。絶対ですよ」
その瞬間の心優の笑顔は、一年次からのクラスメートすら見たことの無い黒いオーラを纏っていた。そこへ、そのような笑顔をものともせずに声をかける者が来た。
「おっはよう、心優!」
「あっ、健ちゃん、おはようございます」
「掃除用具入れの前で何してんだ? まさか誰か入ってるとか?」
「そ、そんなマンガみたいなことあるわけ無いじゃないですか」
さすがは健聖、こういう時の思考回路が心優とよく似ている。
「だよな、はは」
ふと気付く。親友の心優だからこそだろう。どこか健聖の様子がいつもと違うように感じられたのだ。
「何かありましたか?」
その質問に健聖は一瞬目をしばたいたが、ばつが悪そうに頭をかいてこう言う。
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