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「やっぱお前には分かっちまうか。実は今朝、レオンと喧嘩しちまってさ」
「レオンって、新しく来た執事さんですよね。なんで喧嘩なんか?」
「あいつ、俺の言うこと何でも聞くんだ」
心優は健聖の言いたいことをいまいち理解できなかったが、担任教師が入ってきたため席に着いた。掃除用具入れの中で話を聞いていたみらいが、眉をひそめていることも知らずに。
その日最後の授業中のこと、
「退屈だな、学校ってのは」
と周囲に聞こえない声を発するのは、心優のブレイドである。刀の状態で放っておくわけにもいかず、かと言って持ち歩くと警察沙汰になりかねない。と心優が悩む必要は無く、ブレイドは所有者(マスター)の心に仕舞っておくことができるのだ。このように声は聞こえるが。
「授業中ですよ、静かに」
隣のクラスメートに聞かれないよう極力声を小さくして言うと、
「オレの声はてめぇにしか聞こえねぇっての。それにオレが何を言おうと自由だ。授業なんざ知るかよ」
「ボクの集中力が乱れるんですよ」
「知るか」
思わずピキッと怒りのマークが浮かぶ。心優はとても温厚で優しく、怒ることなどまず無いのだが、どうにもこのブレイドとは馬が合わないらしい。
心優が言い返そうとすると、不意に携帯の着信音が教室に鳴り響いた。黒板に向かっていた教師が電源を切れと言おうと振り向いた瞬間、
「仕っ事だ!」
バーンと扉を開け、みらいが掃除用具入れから飛び出してきた。教師とクラスメート全員の目が一斉に向く。もちろん心優も。メールの届いた携帯電話を高々とかかげ、心優と目を合わせるみらい。嫌な予感は的中のようである。
「行っくよー!」
「ちょっ、待っ――」
みらいは周囲からの視線など意にも介さず心優の腕を掴み、むりやり引っ張っていった。後には、呆然として言葉を失う教師とクラスメートが残るだけだった。
目的地は近くの公園だという。授業を勝手に抜け出すという行為は、心優の心にダメージを与えていた。が、みらいはお構い無しで話を始める。
「仕事場所に着くまで、ハーツについて話しとくねっ」
それに関しては心優も気になっていたところである。ブレイドとフレンドの違いは何なのか。
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