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「平野確保ー!!」
後ろを取られた私は、侑介に両腕を掴まれ、仕舞には床に座らされ、手も足も出ない状態だ。
「っもう離してよっ」
「やーだ」
侑介は私の手をひらひらと振って遊んでいる。
私なんかが体を捻ったところで、テニスをやっている侑介はビクともしない。
「はーなーしーてー」
手首をプラプラさせられながら、侑介に言う。
侑介は、「じゃあ、お前の好きな人教えてくれたら離しちゃる」と言った。
言えるわけがなかった。
水瀬君と侑介。私の中の天平は、だんだんと釣り合おうとしていた。釣り合って、いつかは侑介の方が重くなるような予感がしていた。
何も言わない私に、侑介は諦めたのか手を放した。
振り向くと、にっこり笑った侑介がそこにいた。
「止めた。だって平野何にも言わないんだもん。
ほら、帰るぞ。途中まで送ってやる」
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