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「兄貴」
「お、ちょうどいいや。紹介するな、今日から俺の彼女」
「初めまして」
女性はにこりと笑った。(うわ、びっくりするくらいにぶっさいくな笑顔)
「…どうも」
「今日、ご飯食べてくから、よろしくな」
「……へーい」
兄貴はにこりと笑った。(はあ、かなしくなるくらいしあわせそうな笑顔)
とたた、兄貴が部屋を出る。ご飯を作るのだろう。今日の晩飯、何かな。何かな。
「えっと、弟さん?」
「…そうだけど」
「これからよろしくね」
「あんたさ」
「?」
「兄貴の何処がすきなの」
「えっ…えっとね、」
女性はいきなりもじもじしだした。気色悪いな、やめろよ。
「あのね、兄貴はダメだよ。あんた、しあわせになれない。賭けてもいい」
「……え?」
「なれないよ。だめ。兄貴は女をしあわせにできない」
「こら!」
振り向くと、兄貴がジュースの乗っかったお盆を持ってドア元に立っていた。なんだ、ご飯作りにいったんじゃなかったのか。ただ飲み物もってきただけか。
「なんだよ、俺がそんなに嫌いだったのか?」
「…ちがうよ」
「じゃあ、なんでこんなこと言うんだ」
「……………」
「俺のこと、嫌いなのか」
「ちがうよ。全然違う」
(寧ろ好きだよ)(大好きだよ)
「……………」
なんで、こんなに近いのに。
俺だけはっきりみえてしまうんだろう。兄貴には、俺が見えないんだろう。
俺だけ。
(畜生)
(あんな女)(幸せになんてさせない)
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