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GW明けの北桜高校の一大イベント、春の遠足会。男子校だった40年以上前から続く行事で、学校から程近いところにある周囲30キロある粟生野沼を1日かけて歩くというもの。
五月晴れの吸い込まれそうな蒼い空を眺めながら、何も考えず左右交互に足を踏み出せば、相変わらず萎え気味な遥の気持ちもほんの少し軽くなった。
気持ちが軽くなれば、
ますます歩く足も軽くなる訳で。
隣を歩く友人のことを、遥は「軽く」失念していた。
話しながら右隣を歩いていた筈の玉造華奈多(たまつくり かなた)が、遥の視界から消え、いつの間にか気配までなかったことに気付いたのは、
「――ね・・・姐さまぁ、待ってよ~!」
掠れかけた叫び声が後ろから投げかけられた時だった。
遥は慌てて華奈多に駆け寄った。
水筒の蓋を外しながら、アイスティを勧める。
「ごめん華奈多ちゃん!!――あんまり気持ちよくって・・・隣に居るの忘れてた」
勧められるままに一口飲んで、遥の言葉に「んぐ!」と大きな瞳を零れそうなほどに見開いて喉を詰まらせてから、
「わ・・・忘れたって・・・ヒドイ~!」
姐さんのご自慢のコンパスでそんなにピッチ上げられたら、
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