5月

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 会話もなく、ただ黙々と遥達は栗尾野沼の水際を歩いている。 水面が昼近くの白んだ太陽の光を反射した。 見つめると眩しくて、目にじんわりと涙が滲む。 『姐さまと一緒だと黙ったままでも不思議と平気』 話好きの華奈多が、友達と居て一言も話さなくても気まずくない、というのは新鮮だった。 本当に遥は隣に居て全く飽きない。  チリリン、と存在を誇示するような自転車のベルの音に、手を繋いだまま歩いていた二人が振り返ると、 「注目の若手コントコンビ『ハルカカナタ』現在1E女子部トップデース!」 勢い付けて漕いでいたペダルを無理矢理ブレーキで止めたので、自転車は10メートル程先でやっと前のめりになりながら急停止した。 サドルもハンドルも一番下まで下げているので、小学生が母親のママチャリに乗っているような・・・と表現できるのは小柄な1E担任公津杜しかいない。 遥はまた新たな源氏名が増えるのを阻止すべく意見した。 「誰がコントするんですか」 しかし華奈多は、その辺りは完全にスルーして、現在の状況に意見した。 「もりちゃん先生ズルイ~!!歩いてない!」 後ろに乗せてよもりちゃん!とママチャリに追い縋って荷台の金具を掴んで引きとめようとする。 「ずるくない!だって私今先生だもん!私も10年前は30キロ3回歩いたもん!」 杜は唇を突き出して主張しながら、上半身だけ振り返り華奈多の手の甲をぴしっと叩いた。 呆れたように遥が声をかけた。 「何で生徒と同じレベルでケンカするんですか公津先生・・・」 ぐいぐいと歩きながら自転車を引っ張り、華奈多を振り切ろうとしていた杜は、 「メガネっ娘!あなたの相方でしょ!何とかしてよぉ!」
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