4月

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一年生は入学式が終わればその日は直ぐ下校時間だった。 初日で長話するほどお互い馴染めるはずもなく、生徒は鞄を抱えてばらばらと教室を後にする。 遥は頬杖をつきながら、窓側の席からぼんやりクラスメートを見送っていたが、 最後の一人になったのに気がついて、少し校舎内を歩いてみようかと立ち上がった。 ――廊下からミュールの刻むリズムが近づいてくる。 教室の入口で相手の頭が鼻先にぶつかりそうになって、遥は仰け反り「わ!」と声を上げた。 「あ、メガネっ娘!びっくりしたぁ!どうしたのこんな時間まで残って――・・・でもいいタイミング。教科室まで手伝ってくれない?」 教室に現れたのは、小柄ながらもきびきびと動く1E担任、公津 杜であった。 指差した教壇の上には杜の肩の高さくらいまであるプリントの束。特に否を言う理由もないので、 「はい。それを運べばいいですか?」 遥の返事に満足したのか、杜は頷いて幼い顔に可愛い笑みを浮かべて見上げると、小さな両手でプリントの束の半分を遥に手渡した。 「はい、じゃあ、半分こね。メガネっ娘」 「――あの・・・公津先生?」 「何ぃ?」
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