4月

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 国語教科室は木造の旧校舎の2階にある。渡り廊下を抜けて少し薄暗い旧校舎へ入ると、艶のある木張りの廊下は足の運びに併せて小さく音を立てて軋んだ。 「お疲れ様で~す」 杜は教科室に入ると元気良く挨拶する。 「お疲れ様公津先生。どうでした担任初日は・・・」 一人教科室に残っていた年配の男性教諭が声をかけてきた。 「いや~西条先生、皆初々しくてきゅんきゅんしましたよ」 嬉しそうに答える杜の後ろから、遥が声を掛ける。意外に重いプリントを早く下ろしたかった。 「失礼します」 「あ。ごめんごめん。此処に置いてねメガネっ娘」 「――はい」 「これはお疲れ様。あれ?」 西条先生が時計を見上げる。2、3年はまだ4時間目の授業が始まったばかりだ。教室に生徒がいないのはおかしい。 「1Eの加良部です」 「通称メガネっ娘です」 「公津先生!」 二人の掛け合いに、西条先生は優しく微笑んだ。 「ああ、懐かしいね。公津さんと新山君の漫才みたいだ」 え?と杜は一瞬凍りつき、泣きそうな笑顔を見せた。 ――ように遥には見えた。 「止めてください西条先生。もう10年も昔の話じゃないですかぁ。――そうだメガネっ娘。まだ時間あるならもう少しいいかな」 「はい」 「じゃ、西条先生。また後で」 「はいはい。いってらっしゃい」
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