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「よしよし。じゃあメガネっ娘が1年生初の紅茶研メンバー決定」
10センチ以上身長が低い杜から、「えいっ」と腕を伸ばして頭を撫でられた遥は、ふいに緊張が解けて全面降伏する気持ちになった。
「――先生」
普段は内面を曝すまいと頑なな遥の心も、この人の前では解かざるを得ないのかもしれない。
「ん?」
「私・・・っ――」
「え?――ええ?どうしたのメガネっ娘!!」
「さっ・・・き、集合・・・写・・真のとき、本当はっ――泣きたかった――んです・・・!」
堪えようとすると返って涙が溢れそうだ。
こんなに沢山の仲間に囲まれているのに、どうしても馴染めない自分に。
好きな人と同じ学校に入れたのに、声も掛けられない自分に。
此処で変わりたいと願っていたのに、やはり変わることは出来ないのか。
遥の感情の昂ぶりが最高潮に達しそうになったその時、
「そんな目の前で泣かれちゃったら、私まで泣いちゃうじゃない・・・ホントはね、此処に一人で来る勇気がなくて、メガネっ娘についてきてもらっちゃったの。ごめんねぇ・・・」
「先生!?」
杜の幼い顔がくしゃくしゃに歪む。今時「えーん」なんて声を挙げて泣く大人が目の前にいるのに驚いて、遥の涙は瞳から溢れることなく止まってしまった。
――苦笑するしかない。
「公津先生・・・これ」
スカートのポケットからハンカチを取り出して渡す。うう、と唸るような頷きを返して、
「有難うメガネっ娘」
ハンカチを握り締めて、涙を拭う。
「これ、貸しておいて貰ってもいい?」
暫く涙は止まりそうにないようだ。遥は頷いた。
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