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「落ち着きました?」
「――うん。凄く楽になった。カタルシス到来」
「そろそろ帰ります」
「ええ?折角だから、お茶していこうよ」
杜は上着のポケットから小さな四角いものを取り出して見せた。
ふふっ、と嬉しそうに含み笑いすると、
「その名も「サクラティー」。メガネっ娘にご馳走しちゃう」
小さな紙箱に、手描きの桜の花びらのイラストのプリント。
「可愛いパッケージですね」
「うん。『えいこく屋紅茶店』ていう、愛知の輸入商社で作ってるブレンドなの。私も最初パッケージの可愛さで買っちゃったんだけど。これが中々・・・」
「お湯沸かします。――あのケトル借りて大丈夫でしょうか」
「いいでしょ。――多分。今部長誰だろう。今日放課後また来て見るね」
杜はケトルの沸騰音を音だけで見極めると、
慣れた手つきでガラスの丸ポットを温め、カップにお湯を移し、ポットへ茶葉を入れて、勢い良くケトルからお湯を注ぐ。
茶葉とともに、桜の花びらと桜葉がポットの中で吹雪のように舞いあがる。
すぐにティーコジーを被せ、砂時計をひっくり返した。
「凄い。お店の人みたいです。私家ではティバッグしか使ったことなくて」
素直な遥の賛辞に、
「う~ん。なんていうのかなあ。本当はお茶って、普段の生活で楽しむもののはずでしょ。だから紅茶飲むなら、是非是非紅茶は缶で買ってもらって、これくらい出来てほしいなあ・・・なんて思うわけデス」
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