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神木さんの母「今日、あなたと会えるなんてね。
神様はイタズラが好きだから…
…今日はね。あの子の…秋成の、誕生日なの。
生きていれば、20歳になったのね…
19年、か。…早すぎるよね。大人になれそうで、本当になれなかったね…
あの子、遺伝性の病気だったの。私はピンピンしてるのに、あの子は…
生まれてすぐ医者に宣告されたわ。大人になれないだろうって…毎日毎日、不安で…元気に生んであげられなかった自分を責めた…
…だけど。あの子最期に、こう言ったの。
"ずっと辛い思いさせててごめんね、母さん
僕は、生まれてよかった
母さんの子でよかった
生んでくれてありがとう"
って…
辛い思いをし続けたのは、誰よりあの子なのに…
だけど、あの子は…幸せもたくさんくれた。
生まれた秋成を抱いたときの温もり…繋いだ手、笑顔、言葉…夜中に聞く寝息…
今日も生きててくれて、ありがとうって…毎日喜びをくれた。
今はただ…寂しくて、寂しくて寂しくて仕方ないけど…あの子から、たくさんもらったから…また、精一杯歩いていこうって…そう思ってるの…
たくさん美味しいものを食べて、色んなところに行って…あの子ができなかったことを全部全部、私がして…そしていつか…あの子に土産話をしてあげるの。
私が"向こう側"に行ったときにね。…そんな楽しみでもないと、潰れそうだもの…
…そう言えば、あの子、病状が悪化してから童話を書いてたの。部屋を片付けても、そのノートが見つからなくて…書きあがったら、あなたに一番に見せたいと言ってた。
"母さんは2番目ね"って笑ってた…
あの話は…書き終わらなかったのね…」
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