桶狭間

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「今戻れば線香に間に合うな……よし犬!葬式に乗り込むぞ!」 犬は笑って答えた。「相分かった!」 二人は馬を走らせた。 ところかわってこちら葬式。厳かな雰囲気の中式は進む。 とそこへ馬の音がしたかと思うと、 鷹狩りの格好から着替えていない信長がやって来た。 葬式で全員裃という正装で来ているというのに…… そこにいる全員がまゆをひそめた。 信長はそれを意にも返さずお堂の前まで歩いて行き、遺灰を乱暴に掴み、言った。 「親父……親父の出来なかったことを俺がやってやる!」 そして唖然としている人々を見渡した。 中には今川からの使者もいる。 「お前ら親父をなめるな、よく見てろ!」と信長は遺灰を乱暴に投げた。 一段とお経が激しくなっていたがそんなことは気にしてられない。 信長はそれだけやると自分の馬に戻りどこかへ行ってしまった。 騒然となる中、犬だけはその様子をニヤニヤしながら見ていた。 「ははっ、あいつらしいな、しかしあれが奴の弔い方なんだからな……」 そして犬も馬に乗る。 「賽は投げられた。後には引けないな」
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