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文化祭を間近に控えた、ある日のことです。
透き通るな青空の下、温暖化の影響でしょうか──11月だというのに、半袖でも良いくらいの暑さでした。
僕はその日、陸上部の朝練を終え、早足で教室に向かいました。
そして教室につくやいなや、ケータイ小説の更新に勤しみます。
僕の小説は『√3とは呼ばせない』という、少し頭脳戦の混じったSF小説です。
やがてチャイムが鳴り、退屈な数学の時間がやってきます。
「ここ、大事だぞ。微分というのは接線の傾きで──」
僕は数学なんて全然聞かず、小説の更新に夢中でした。
僕には不思議な力──「ケータイを見えなくする力」があるので、誰も気付きません。
おかげ様で更新もはかどり、『モバゲータウン』の小説大会で総合3位になっています。
最終ランキングが3位以上の作品は書籍化されるそうなので、凄くドキドキしています。
まあ、そのせいで学校の成績は酷いんですけどね……。
「そして重要なのは、右から近づいた極限と左から近づいた極限が同じということだから──」
授業なんて右から左へ聞き流しながら更新に励んでいる途中、ふとすぐ右にある窓の向こうを眺めました。
雲がそれほど無い、爽やかな青空。
その下で、文化祭に向けて大規模なステージを作る人の姿が見えました。
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