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休み時間。
後ろの席の女の子が喋りかけてきました。
茶色髪は肩まで伸びていて、毛先がくるんとカールを巻いています。
そして頭のてっぺんの髪だけぴんと跳ねた、おもしろい髪型の可愛い女の子──香坂夕月(こうさかゆづき)です。
「ねぇ、アキラ。今日の更新分見たけど……一之瀬はあの後どうなっちゃうの?」
夕月の目はキラキラ輝いています。
その楽しそうな目を見るのが、何よりの幸せでした。
「ふふふ……それは明日になってからのお楽しみだよー」
「まあ、そりゃそうだよねー。けどアキラ、ホント凄いよ。小説家になっちゃえばいいのに!」
いつもながらの明るい口ぶりで話す夕月を見ながら、自分の頬に手を添えました。
「いやいや、僕なんかより凄い人はいっぱいいるよ。そんなの無理だよ」
「ほら、『ダメもと』って言うでしょ?やってみなよ!」
「出たね。夕月の名言『ダメもと』」
「ちょっとー、馬鹿にしてんの、アキラ!」
夕月は笑顔で、僕の耳を引っ張ってきました。
こんな他愛もない日常が、僕は大好きです。
夕月が広めているのでしょうか──夕月以外にも僕の小説の読者は結構いるみたいで、たまに知らない人に声をかけられたりします。
めちゃくちゃ嬉しいです。
最高にハイってやつです。
けどその日──僕は、その大好きな日常を壊されました。
教室のドアが勢いよく開いたのです。
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