登校

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「――――午後からの天気は雨となり、お出かけの際には折り畳み傘が必要になるでしょう」 オレは朝のお天気予報士のお姉さんを見ながら、パンを口に挟みもぐもぐしていた。 もぐもぐといっても「食べている」というより、それは「口を動かしている」に近い。 つまり、“食べようとはしているが、眠気により意識が飛んでいる”状態だ。 そんな、まどろみの中、テレビとは別の方向から声がする。 意識が曖昧なせいで声もまた曖昧だったが、耳を澄ます必要もない。 聞き慣れた我が母君の声だ。 オレは頭の中で「もうそろそろ時間かぁ」などと思いながら、食べているのかいないのかハッキリしない、もどかしい口の動きを止め、口の中に無理やりパンを押し込み、無理やり胃の中に押し込んだ。 それがスイッチになったのかどうかは知らないが、徐々に意識がハッキリとしてくる。
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