あなた日記

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時計の音が響くほど静かな部屋の中で、Sは、画面のついたモニターを眺めていた。 このモニターはテレビではない。パソコンのディスプレイである。 Sはネットを、特別な目的も無く適当に流し見ていた。 「…お?」 と、Sはある言葉を目に止めた。 「………『あなた…日記』…?」 意味が分からん。 初めはそう思った。どうせ人間の『何だろうこれ。気になるなぁ』という誘惑に語り掛ける言葉なだけだろうと、その場はスルーした。 ……かったのだが、人間は誘惑に非常に弱い。 いや、Sだけではなく、ね。 ついつい、そのページをクリックしてしまった。 ぱっと切り替わった画面には、『あなたにっき』と無駄に可愛いロゴが表示された。 その下には、小さな文字の羅列があった。 「……これはあなたの日記です。あなたの戸籍上の名前、生年月日、最近はまっていること、個人を特定できる何かしらの情報、宇宙物理学について自身の思うことを全て入力して下さい…?」  
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