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学校に行かなかった理由は辛かったからだけではない。
ここにいたら遥が荷物を取りにこの部屋を開けようとするだろう。そのときにもう一度遥を説得してやり直そう、そのことを目論んでいた。プライドが高い俺だが、遥が戻ってくるのなら土下座だって何だってする。いや、何だってできる。遥が部屋を部屋に戻すことだけが今の俺の唯一の希望だった。
その期待していた日は、意外にも早くやって来た。遥は何も持たず出て行ったのだから当然かもしれない。いつものように酒に溺れ、だんだん眠くなってきた時だった。
玄関の鍵が開く音がした。この部屋の鍵を持つ者は管理人と大家と俺だけだ。管理人なんて俺の部屋の鍵を開けることなんてない。じゃあ開けられる奴なんてもうたった1人しかいない。
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