空虚

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「今日―」 とお母さんが話し始めた。 「宏明君の家にお邪魔して、宏明君の表情や部屋を見て、遥が本当にあなたを傷つけてしまったんだと分かったわ。」  溢れる涙を拭おうともせず、静かに話すお母さんを見ながら、俺は遥が出て行ったあの日を反芻させていた。  遥は母親似だったから。 「あんなにも遥を大事にしてくれたのに、裏切る事になってごめんなさい。私が言うのもなんだけど、私はあなたの幸せを願っているわ。」 「はい…ありがとうございます。お気をつけて。」  無理矢理笑顔を作りお母さんを見送った。お母さんも涙を拭い、複雑そうに、一瞬だけ俺を見つめ帰っていった。
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