堕落

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「へー」  ありきたりの返事を返された。大学の友人なんてそんなもんだ。馴れ合うだけで腹割って話すことなんてない。皆自分のことしか考えてないのだから。  適当に会話して、授業をやり過ごして、それから家に帰る。だが、家にはいたくなかった。鬱にしかなれないから。だからバイトの数も増やした。  すこし前デートした時に、遥が「かわいい」と目を輝かせて見ていた指輪を買ってやろうと思った次の日から俺はホストのバイトを始めていた。もうすぐ目標金額が貯まる矢先に振られたけれど。  酒を大量に飲まされ、かわいくもない女にお世辞を言い、ストレスで身体を壊しかけ、「ホストなんて…」と何度も思ったが、働いている間は遥を忘れられるから、辞めずにいた。  今日は出勤日でもなく、友達も捕まらなくて家にいた。退屈で仕方がない。俺は財布の中身を確認し、携帯と財布だけを持って外に出た。  家の近所に小さなバーがある。薄暗く、小さな店内にはゆったりとしたテンポのジャズが流れている。いくつか置かれている水槽には色とりどりの熱帯魚が泳いでいて、その姿に癒されている。  お気に入りの奴しか連れて行かない、そんな場所。
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