堕落

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「マスターそりゃないっすわ…」  苦笑いして酒を灰皿から少し離した。 「ごめんねー。あきちゃんならそんくらいいけると思って。それに嫌な事忘れたいならそれくらい強い酒じゃないとね。」  マスターは微笑んで言ったあと、タバコに火をつけ、「まあ忘れられるのは一時的だけどね」と付け加えた。 「マスター、俺さ」 「うん?」  店内のBGMは軽快なジャズに変わっていた。店内はとは裏腹に、しんみりとした空気が流れた。  俺は今まで洗いざらい話した。幸せだった記憶と幸せが壊れた瞬間。酔っ払っていて同じ事を繰り返し話していたかもしれない。  けれど、マスターに聞いてほしくて仕方がなかった。
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