終焉

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 遥がこの家を出て行ってしまえば、俺らは終わってしまう。それだけは嫌だ。  たった一度の浮気なら許すよ?  つか怒ってねえから、「俺のそばにいられない」なんて言うなよ。  そう思った瞬間、体が動き出した。無意識に目が遥かの後ろ姿を捉え、脚が遥の方へ進む。腕が遥の華奢な身体を捕まえる。鼻が遥の甘く優しい匂いに擽(くすぐ)られる。  一緒に使ってたシャンプーと、お揃いの香水の匂い。遥を抱きしめて、同じ匂いを共有する時間がたまらなく好きだった。 「お願いだから行かないでくれ。俺にはお前が必要なんだよ…なあ…遥…。」  女にすがりつくなんてカッコ悪いことだと思っていた。過去に付き合った女にはこんなに引き下がろうとしたことはなかった。それくらい遥は特別だった。安っぽい言葉になるかもしれないが、死にたくなるくらい遥を愛していた。 「なあ…こっち向いてくれよ…。」  そう言っても振り返ろうとしない遥を、無理矢理自分の方に向け、唇を重ねようとした。  しかし、遥は顔を背け俺を拒むと一瞬だけ俺をみた。冷めきった目だった。 「触らないで。」  そう言って玄関に向かって歩いていく。遥は、靴を素早く履き、ドアを閉めた。
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