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クロスターはNY市警クイーンズ地区の誘拐事件対策チームに在籍する刑事だ。
あらゆる凶悪犯罪の宝庫であるこのメガロポリスに於て、誘拐は日常茶飯事、必ず何処かで進行している。
それは営利目的、性犯罪目的、果ては人身売買目的と、言葉は悪いが二度と同じケースが無くて退屈しない程だ。
今回もクロスターは相棒のスチールと、ある失踪事件を追って居た。
不明者は、ハーバードと並びアイビーリーグで名高い私立コロンビア大学の心理学専攻の院生。東海岸出身でNYに独り暮らし。
両親から十分な仕送りを受けて居たので、アルバイトをする必要も借金をしている形跡もなく、現に失踪当日には友人とパーティの予定を立てて居たという。
アパートメントの一室に飾られた花は、2週間も水を替えられずに放って置かれた御陰で、既に花瓶の水の内の茎が腐っていた。
更に、
「――チキンとピザを用意して、逃げる馬鹿が居るか?」
クロスターとスチールは、顔を見合わせてNO ONE!と叫んだ。
「拉致監禁で決まりかな。じゃあ一体誰が?FRIENDS OR LOVER?」
クロスターの問いに、スチールはテーブルの上の手のつけられて居ない御馳走を、フラッシュを焚いてカメラに収めてから、
「――さあな。院生を連れて行って得する奴が居るんだろ?俺達の出番かどうかまだ分からない。――ああ畜生、チキン見てたら腹が減った…」
「ジェームズ、そんな黴だらけの物食うなよ。外で飯にしよう。ここには取り敢えず何も無さそうだ」
犯人から接触はない。本人から連絡もない。友人と家族が捜してくれと頼みに来なければ、それにクロスターとスチールが興味を持たなければ、忘れ去られてそのままの事件の筈だった。
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