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「一つ。善良な学生が、自分に非が無くてどうして隠れる必要がある?二つ。上流階級(ブルジョア)の両親の処に金を要求しないのは、身代金目当てではないからだ。以上の点から、失踪にしろ拉致にしろ、院生は、怪しい」
最後は診断書を書く時のような事務的な口調になる。
チキンとピザが手付かずだったことがクロスターとスチールの「犯罪の匂い」を嗅ぎつけた理由であったが、その現場を見て居ないアンダーソンは、ほんの少し漏れ聞く情報で別の視点から推理をして退けた。
「怪しいのは俺達だってわかったよ」
「御前なあ(HEY YOU)。それじゃあ捜査の専門家の意味がないだろう。その理由を捜して推理するのが、御前等(POLICE)の仕事。税金泥棒って云われるぞ」
「税金をきちんと払ってから云えよ、ラスティ」
診療時間外の往診については税金や医療保険料を払えるような額すら治療費を取っていないので、申告は規定時間内の分しかしない。
これは立派な犯罪だ。
しかし、クロスターは目の前で起きている犯罪を見逃しているような気にはならない。法に称って居ない正義も在るのだと思うからだ。
だから非番の日も進んで「非合法な医療行為」の手伝いをする。「じゃあ家賃を払って貰おうか、マイク」
そんな金があるなら、居候などしない。
「――お互い様だな」
揃って苦笑して水掛け論は終わった。
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