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「抜糸は2週間後。今日明日はシャワーを浴びるな。これは化膿止めの抗生物質。飲み薬だ」
叫び疲れたテッドはぐったりしたままうなづいて薬を受け取った。
「ほら、これを着ていけよ」
斬られて穴の開いた血塗れの上着の代わりにと、シャツを着替えるように差し出されて、やっと自分の今の姿を認識したように、
「有難うマイク」
頷づいたクロスターは、デスクの回転椅子を回して背垂れを前にすると、長い脚で跨いで座り込んだ。
「じゃあ、--そいつの御礼にちょっと話を聞こうか、テッド」
「?」
「これ。何処で盗った?」
指に挟んで示したのは、テッドが「一仕事して」獲た財布だった。
「何だよ、見逃してくれるって云っただろ!」
「金だけならいいさ。しかしこのカードは、問題だな」
財布の持ち主はトランプ宜しく沢山のカードを持っているらしく、ポーカーを始めるプレイヤーのようにクロスターの手の内から扇形を描いて現れた。
「この内の一枚は、俺が今捜してる行方不明の大学院生の物だ」
サインがインテリらしい奇麗な筆記体で記されている。
「話さないならまたブチ込むぞ」
「薮医者の次は横暴警官か…。――クィーンズの外れだよ。こんな夜中に何を捜してるんだか、おどおどした足取りでさあ。いいカモだったと思ったのに」
薮医者と連発されて不機嫌だったアンダーソンが口を挟んだ。
「ハンターがカモに殺られかけるとは、笑い話にも成らないな」
「止めろよラスティ。それで?どんな奴だった?」
「そうだなあ、インテリっぽいっていうのは合ってるけど。院生って云うよりあれは学者だね。夜のダウンタウンを歩き馴れてない紳士だよ。年寄りだ」
「紳士が勇敢にもナイフで反撃?」
「だから、仲間が居るって云っただろ。俺はタメ歳位の奴にやられたの。あの辺りのキッズは仲間作ってるんだ。俺とは違う。ヤバい奴等と対等に付き合う位のことはしてる」
「ストリートキッズと、ドクトールの紳士、か。どういう繋がりがあるんだ」
「知らないよ。――財布も渡したし、もう無罪放免だろ?」
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