1ーThe boy who was rolled upー

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「ふぁー、そろそろ帰ろうか…」 机に散らばった学習道具を片付けながら、曽根川 ひかるは呟いた。 時計は既に午後7時を大きく廻っている。外はもう日の光は無く、夜の闇に沈んでいた。 自主的に学校で居残りをして学習する生徒も少なくは無いが、時間が経つにつれて一人、また一人と帰宅し、彼程遅くまで居残る生徒はいなかった。 鞄に荷物を詰め、時折女子と見間違えられるような小さな肩にそれを背負う。    帰る間際、何気なく教室の窓から外を見る。 「…ん?」 誰もいないはずの広大な校庭に、ポツリと人影が見えた気がした。 明かりは殆ど月明かりしかないほどのわずかな明るさなので、見間違えかもしれない。 「まぁ…いいや」 教室の電気を消し、暗い廊下を一人歩く。 「うぅ…何度も通ってるけど、やっぱり怖いや…。これからは愛流でも誘ってみようかな…」 そして、その考えに至った自分自身にひかるは失笑した。 幼なじみで同級生でもある、天見愛流。 常に「だめもと」を座右の銘に掲げて生活をしている彼には、勉強などほど遠い世界の事物であった。 階段を降り、一階の玄関へと向かう。 一階の廊下の窓から、もう一度校庭を見てみた。 「…あれ?やっぱり…いる…?」 明かりもない校庭の隅に、ポツリと一人たたずむ人影。 そのあまりに不気味な光景に、ひかるは少し身震いをした。 「…部活生かな…?」 合理的に考えればそれが最も妥当であろうが、その人影は何かを探す様子も無く、そのようには見えなかった。 どちらにせよ、自分には関係ないことだろうと足早に玄関に向かう。
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