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「ふぁー、そろそろ帰ろうか…」
机に散らばった学習道具を片付けながら、曽根川 ひかるは呟いた。
時計は既に午後7時を大きく廻っている。外はもう日の光は無く、夜の闇に沈んでいた。
自主的に学校で居残りをして学習する生徒も少なくは無いが、時間が経つにつれて一人、また一人と帰宅し、彼程遅くまで居残る生徒はいなかった。
鞄に荷物を詰め、時折女子と見間違えられるような小さな肩にそれを背負う。
帰る間際、何気なく教室の窓から外を見る。
「…ん?」
誰もいないはずの広大な校庭に、ポツリと人影が見えた気がした。
明かりは殆ど月明かりしかないほどのわずかな明るさなので、見間違えかもしれない。
「まぁ…いいや」
教室の電気を消し、暗い廊下を一人歩く。
「うぅ…何度も通ってるけど、やっぱり怖いや…。これからは愛流でも誘ってみようかな…」
そして、その考えに至った自分自身にひかるは失笑した。
幼なじみで同級生でもある、天見愛流。
常に「だめもと」を座右の銘に掲げて生活をしている彼には、勉強などほど遠い世界の事物であった。
階段を降り、一階の玄関へと向かう。
一階の廊下の窓から、もう一度校庭を見てみた。
「…あれ?やっぱり…いる…?」
明かりもない校庭の隅に、ポツリと一人たたずむ人影。
そのあまりに不気味な光景に、ひかるは少し身震いをした。
「…部活生かな…?」
合理的に考えればそれが最も妥当であろうが、その人影は何かを探す様子も無く、そのようには見えなかった。
どちらにせよ、自分には関係ないことだろうと足早に玄関に向かう。
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