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「それ」は傷つき、体液を流しながらも未だに倒れていなかった。
「…まだ立っているの…?」
玲菜が驚愕の声を上げる。
愛流の機体は爆風で吹き飛び、動いている様子は確認出来なかった。
暫く、誰も動かない静寂な時が空間を包んだ。
その中で最初に動いたのは…「それ」だった。
「…ッッ!」
玲菜の機体が銃を構える。
「それ」は辺りを見回し、木陰で震えるひかるを見つける。
するとすぐに、ひかるに向かって腕を突き出して走ってきた。
「う、うわぁあああああッッ!」
ひかるは絶叫しながら木陰から逃げる。
「な、一般人?!紛れ込んでいたの?!」
玲菜の絶望的な声。
「それ」は、笑い声にも似た奇妙な声を上げてひかるを追い掛ける。
生身の人間と巨人のような体躯のスピードではまるで話にならず、ひかるのすぐ後ろにまで「それ」の指は迫っていた。
ひかるの体が掴まれる。
「うわぁ、離せ!離せよ!」
だが「それ」は全く同じず、ひかるを宙へと持ち上げた。
「それ」の仮面の口の部分が開く。
それはまるで笑っているかのように見えた。
が、しかし、口を開いた目的は他にあった。
ひかるを持った手をゆっくりと口に運ぶ。
「こ、こいつ、僕を食べる気?!やめろぉおおッッ!」
ひかるの絶叫は真っ白な空に虚しく響く。
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