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【シェルノス魔法専門学校:校長室】
「は? ちょっと待て。俺がこいつの、強制退学免除を賭けた特別試験の……サポートをやれだと?」
この日、突如校長室へと呼び出された輝は唐突にそう話を切り出された。
老女性が校長を務めるこの校長室には同期生、柊木光が先に呼び出されており、恐縮そうに縮こまっている光に遠慮なしに名指ししながら輝は声を上げた。
「えぇ、そうですよ夏ノ宮君。私はあなたの本校での成績、人柄などを見込んでこの子の特別試験のサポートをしてもらいたいのです」
「だからちょっと待てって。この学校は優秀な魔法使いを育てるのを急務としてるんだろ? いつもなら強制退学になるような奴らは特別試験なんかなかったじゃねーか」
「確かに、我が校は出来る限り多く、より優秀な魔法使いを世に送り出すことを急務としています。そのために本来ならば魔法成績不振者は強制退学させ、新たに才ある生徒を引き入れる制度を取り入れてはいますが、今回は特別事例なのです」
「特別事例?」
どこまでも落ち着いたような雰囲気を纏う校長はこくりと頷き、部屋の隅っこの方で恐縮そうにしている光を手招きしながら呟いた。
弱々しい表情で近くへとやってきた光をじろじろと見つめる輝の顔つきはあまり芳しいものではない。
強制退学の対象に選ばれると言うことは、簡単に言い表すならば落ちこぼれ。
輝の表情の理由は、特別試験をさせてまで落ちこぼれを学校に残そうとする校長の意図が掴めないからでもあった。
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