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「柊木さんはただ単に魔法の成績が悪いからと言って強制退学の対象に挙がったのではありません。それ以前に、この子は本校で一度も魔法を使ったことがないのです」
「は?」
思わず丸くなってしまった輝の瞳は自然と光へと向けられ、好奇にも似た目線が注がれた。
少なくとも魔法使いを目指す者がシェルノスの各地から集まり、厳しい入学条件を満たした者だけが入れる魔法学校。
故に強制退学の対象に挙がった光のその理由が、一度も魔法を使ったことがないということはにわかに信じられるものではない。
「ですが何も、魔法を使えないということはありません。我が校への入学条件は、魔法を使える者と使えない者との境界線でもある“魔道契約”が必須なのはご存じでしょう。この子は確かにその魔道契約を果たして我が校へと入学しました」
「なのに魔法を一度も使わねぇのはおかしいだろ。使いたくねぇんならさっさとここから去りゃいいじゃねーか」
「ふぇ……あの、その……」
輝にキツい目線と言葉を向けられた光はビクリと肩を竦ませ、俯きがちに縮こまる。
ふるふると肩を震わせ、瞳が段々と潤ってきたのだから光の繊細な心が見て取れる光景である。
「まぁまぁ、そう言わずに。この子にはこの子なりの事情があるのですよ、夏ノ宮君」
「んだよ、その事情って。つーかそんなもんが分かってんなら学校側で何とかすりゃいいじゃねーか」
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