1298人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうしたいのはやまやまですが、これは柊木さんに関する個人的な問題ですので、私たちが関与することではないのです。かと言って魔法を使おうとしない者をいつまでも在学させておくには些か温情だけでは済まされません。それで私たち本校が下したのが、強制退学免除を賭けた特別試験という訳です」
「……そういうことか。やっと合点が行ったな」
やっと学校側の意図を掴むことに成功した輝は、ここに来てようやく張り詰めた表情を緩める事が出来たようである。
もしも光が魔法の才に溢れているのにも関わらずに強制退学させてしまっては学校側としては大きな痛手となる。
かと言ってどのくらい魔法を使えるのか分からない光を在学させ続けるのは許されることではなく、悩める状況の中で学校側が導き出したのは見事、というべき案だ。
結果からすると、試験をクリアするということは魔法を使い、少なくとも落ちこぼれレベルではないということ。
もしも魔法を使わず、もしくは使っても落ちこぼれレベルであればそのまま退学させ、新たな生徒を引き入れる。
優秀な魔法使いをより多く輩出させる急務を担う学校側としては、まさに名案であるだろう。
「でも待て。ならどうしてその試験に俺がサポートとして付き合わなきゃなんねーんだよ。俺はこいつの事なんか一切知らねぇんだぞ? だいたい、こいつ自身の問題でこうなってんだろうが」
「それはこの試験が少し特殊だからですよ。この試験は一人だけではおそらく何の意味も成しませんし、危険かもしれませんからね。そこで私たちは“下級属性”はおろか、“中級属性”まで体得した才ある生徒でもあり、柊木さんとは同期生でもある夏ノ宮君を抜擢したのです。サポートには十分な実力でしょうし、それ以上に私は……夏ノ宮君に期待していますよ」
「期待って、何の期待だ?」
その時校長の浮かべた表情は何とも推し量り難いもので、輝は軽く微笑む校長の意図を掴むことは出来なかった。
ただ確かに言える事は、校長が浮かべるこの微笑みこそが、この二人の運命を紡ぎ合せる架け橋になったのだと……ほんの近い未来で、分かることとなった――
最初のコメントを投稿しよう!