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「ねねッ! ここがあの“魔道の祭壇”だよね? 偉大な魔法使いたちが危険な世界中を旅して踏破した地域に繋がってるゲートがあるって噂の」
「あーはいはい、うるせぇから騒ぐな。あぁ、あと言っとくがここに来たことねぇんなら勝手にちょろちょろすんじゃねーぞ。下手すりゃ死ぬぞ」
「えッ――」
目的地に到着した二人はそのまま石で造られた巨大な祭壇の頂きへと登るために階段を上がって行くさなか、少し高揚した感じで物珍しそうに辺りを見渡していた光の歩みが不意に止まった。
輝の発した一言のせいで表情がわずかに凍りついたのだが、輝は光に一瞬たりとも目線を合わせることなくさっさと上がって行くのだから光は慌て気味に輝の後を追いかける。
先ほどより一歩分ほど輝との間隔が狭まったようにも見える中、若干怯えたような震えた小さな声が輝の耳に届いてきた。
「し、死ぬって、何で……?」
「何でって、そりゃあ決まってるじゃねーか。シェルノス全体を覆い護ってる“魔法の防塞壁”の外側にある世界はヴェルナが支配する領域。ここにある数多のゲートはその物騒な世界の各地に繋がってんだからな、場所によっちゃあ一流の魔法使いでも苦戦するほどのヴェルナだっているんだよ。それに、ゲートは一度通ると丸一日経たねぇと使えねーしな。だからちょろちょろすんなっつってんだよ、うっかり間違ったゲートに入って……ヴェルナに殺されたくなきゃな」
「ふぇ……そ、そうなんだ。でも、もう大丈夫だよ。ちゃんと気を付けるから」
さらにもう一歩、輝に近づいたかのような距離から光のか細い声が聞こえてくる中、ここに来て二度目となる輝の不意な振り返り。
話を聞いて行くうちに自然と距離が狭まって行っていた光は、歩みを止めた輝に再びぶつかるのだった。
「おい、どっちか片方の腕出せ」
「ふぇ?」
再びぶつかってしまったことに反射的に謝ろうとしている光をまたもや無視し、輝は短くそう告げた。
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