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「以上を、入学の挨拶とする。諸君、精進するように」  広い講堂の中、一際大きな舞台上で、今挨拶したいかにも軍人らしい中年の男性が、このノアガーデンの学園長だと私の後ろに座る愛流ちゃんが耳打ちした。 「私語は慎みなさい」  ムッとした表情でそう小さく窘めたのは、私の左隣に座る上之宮さん。  私は、苦笑するしかない……。  ▲ ▽ ▲ ▽  入学式を終え、予め振り分けられたクラスの教室へと向かう廊下の途中。 「ねえねえひかるっち」  愛流ちゃんが声をかけてきた。 「さっきの学園長、恐そうな人だったね」  何だか彼女とは既に似たような会話を交わしたような気がするのは気のせいなのだろうか。 「そうかな? 私はそうは感じなかったよ」 「ええ? ひかるっちはああいうのがタイプ?」  この子の思考回路はどうなっているのだろう。飛躍し過ぎている。私は彼女の言葉を完全に無視した。  学園長さん、確かに厳しそうな人ではあったけど、挨拶の時に私たち学生を見渡した時の目は、なんというか、慈愛を含んだ眼差しだったと思う。 「またあなた達は、私語を慎みなさい」 「うわ、こわ委員長」  ――こわ委員長?  またも、前にいた上之宮さんに窘められ、愛流ちゃんは訳の解らないあだ名を叫び退散。  程なく教室に着いた私達は、それぞれの席に着くのだけど……。 「ひかるっちはいいとして。こわ委員長まで席が近いなんて」 「誰がこわ委員長ですの! 無礼ですわよ 」  私を挟んで喧嘩するのはやめてほしい。横に並ぶ席で、私を真ん中に見事隣同士になった上之宮玲菜さんと愛流ちゃん。この時は偶然って凄いなー位に思っていたのだが。 「みな席に着いたか、では、今からチーム分けをする」  ひな壇のような生徒側の席からは見下ろすような形の教壇。そこに赤髪のポニーテールを揺らしながらツカツカと歩いてきた軍服姿の眼鏡の女性は、凛とした、よく通る声でそう宣言し。雑談していた教室内が一瞬で静まる。 「私はこのクラスを担当するアスク・シーカーだ教える教科は座学全般とBAを使った訓練も一部担当している」  意思の強そうな瞳で、アスク先生は――。 「私の事は、教官と呼ぶように」  ……アスク教官は、そう自己紹介する。
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