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「答えられないのですわね?」
「わ……私……」
「結構。貴女、ここを辞めた方が懸命ですわよ。いえ、辞めて頂けます? 貴女のような方がいると、他の方にも悪影響ですし」
ゾッとするほどの冷たい瞳で、上之宮さんは私にそう言い放った。
瞬間。
「上之宮!」
怒号。
愛流ちゃんが突然立ち上がり、上之宮さんの制服の胸倉を掴んだ、だけど上之宮さんは全く動じない。
「言い過ぎだよ! ひかるに謝れ!」
凄い形相だった。まだ一週間程の付き合いしかないが、いつもニコニコしている愛流ちゃんのこんな表情は初めて見た。
「嫌です。天見さん、貴女も解っている筈ですわ」
上之宮さんは胸倉を掴まれたまま、再び私に視線を移し、諭すように愛流ちゃんに語りかけた。
「彼女のような半端な思いの方がいれば、いつか必ず誰かを巻き込む。ましてやわたくし達はチームです。わたくしは、彼女に命を預ける事はできません。貴女もそうでしょう?」
その言葉に愛流ちゃんは上之宮さんから視線を逸らし、何も言わない。それだけで、愛流ちゃんが何を思っていたのか私は理解してしまった。その時にギリリと不快な音がした。多分、愛流ちゃんが奥歯を噛み締めた、音。
「では、失礼しますわ」
胸倉を掴んだ手を払い除けると、上之宮さんは去って、いった。
座り俯く私。愛流ちゃんはしばらくその場に立っていたが。
「ひかるっち、気にしちゃ、駄目だよ?」
落ち込む私を気遣かって話しかけてくれた。優しい子だ。
で、も。それが。
「ありがとう愛流ちゃん」
作り笑いで、そう言ったのが精一杯。
もう崩れ、るよ。
「ご、めんね。少し、一人にして、欲しいかな、なんて」
「あ、うん」
それだけで察してくれた彼女は、心配そうながらも去ってくれた。
優しい、けれど今、は。
その優しささえ、
同情さえ、私の心をズタズタに引き裂く。
胸が苦しかった。
呼吸が、走った訳でも無いのに浅くなる。心臓の鼓動が跳ね上がる。
う。
わ、私は立ち上がり、廊下を、早足で歩、く。
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