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――夢を見た。そう、これは夢だ。  私は、カゴの中にいる。私は手足をジタバタさせる事しかできない。後は泣く事だけ。  鳴り響くアラーム。五月蝿い。だからまた泣いた。  泣いて、泣いて、これでもかと泣いていると、不意に、私の右手に何かが触れた。 ――柔らかく、温かい手だ。  優しい甘い香り。そうだ、これは、お母さんだ。私の“小さな手を”を優しく握る。 「――る。泣かないで」  安心するなぁ。お母さんの手の温もり。  今度は左手に別の何かが触れた。  ――大きくて少しごつごつしてるけど、やはり温かい手だ。  少し渋い、私の嫌いなタバコの匂いがするけど。これはお父さんだ。私の手を、おっかなびっくり握る。 「――る。お前だけは助けるからな」 ――助ける?  よく解らないけど。お父さんの手も安心する。  私は、笑う。嬉しいから。小さな私の行動に理由は無い。ただその時湧き上がった感情をすぐに表に出すだけ。 「ねえこの子には酷かしら―――なんて」  お母さんがお父さんに喋りかける。二人の顔は靄がかかったようで、口元しか見えない。 「そうだな。酷い親かもしれない。だが――――なければ全てが無駄になってしまう」  お父さんがお母さんに喋りかける。私はまた笑い。その様子を見た二人が微笑んだ。  「さあ、行こうね――る」  お母さんが私を抱き抱え。立ち上げる。  爆発音。五月蝿くてまた泣きそうだったが、お母さんに抱かれていたので泣かなかった。  そして私は、カプセルのような物に入れられた。透明なフィルター越しに二人の顔が見える。私は急に不安になり大声で泣き出した。 「――る」  お父さんの声が微かに聞こえ。 「お前が、もしもまた宇宙(ここ)に来る事があるのならば」  少しの間をおき。 “お前が見つけるんだ”  その言葉をお父さんが紡いだ瞬間。私はカプセルごと漆黒の闇へと放たれた。  二人がいた場所が遠くなる。  私は見た。徐々に遠ざかるなか、艦を覆い尽くすほどに群がっていたのは。  “赤くギョロリとした眼を持つ虫”  だった。
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