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「す、すみません」
思わず謝った。言い負かされたと言うよりは、その剣幕、勢いに負けた。
「わかればよろしいですわ」
満足気に頷くと金髪の美少女は思い出したように尋ねてきた。
「あなた、お名前は?」
「そ……曽根川ひかるですぅ!」
情けない程に声が裏返ってしまった。だって、ここでモタモタしてたらまた怒られるかと思ったから。
「曽根川さん」
「はいっ!」
ビクッと反射で返事をした。一瞬、また怒涛の口撃が始まるかと思ったのだ。
けど。
「わたくしの名前は、上之宮玲菜ですわ。あなたもこの‘ノアガーデン’に入学した以上、もう少し自覚を持つ事。お分かりになりまして?」
「は、はひ! えと、ウエノミヤ、さん?」
もう怒ってない?
上目づかいに、顔色を伺ってみる。
「ええ。では、失礼しますわ」
言うだけ言うと、颯爽と彼女――上之宮玲菜さんは去っていった。
彼女の後ろ姿が見えなくなった頃。
「ぷは~~」
ようやく解放。
息が詰まるかと思った。ああ、呼吸が出来るってこんなに幸せな事だったんだ。
おばあちゃん。今私は、普段何気なくしている小さな事の大切を知りました。
それにしても、たいへ――
「大変だったね~♪ あんな恐い人もいるんだね。うんうん」
右隣から声、そうそう同感です。
「そうですよね。どうしよう、他の人達もあんな感じだったら」
「大丈夫大丈夫♪ 恐い人もいれば、きっといい人もいるよん」
「ですよね」
「そうそう。前向きが1番だよ、ひかるっち♪」
「あははは♪」
「あははは……」
って――誰?!
ガバっと右へと振り向く。
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