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――触覚?
振り向いた私の目に先ず飛び込んできたのは、ピロリと伸びた一本の触覚……ではなく。
「ひかるっち、下だよ下!」
キャピっとしたその声に導かれるまま視線を下へと移すと。
「ヤッホー」
と叫ぶ、触覚みたいな髪を伸ばした少女がいました。
「ええっ?!」
ズザっと後ずさる。ギャグじゃないよ。いや、あまりにも距離が近くてびっくりしちゃったからです不可抗力。
「うお?! 急にどうしたのひかるっち?」
「え、え? いや、あの」
落ち着け私、目を閉じて大きく深呼吸。スーハー。
……よし。改めて相手をよく見る。
――愛い(うい)です。
私の素直な感想だった。背は私よりも頭半分程小さく、黒のブーツに、上も黒を基調としたワンピースっぽい服をきているのだけど、これが変わっていた。背中には天使の羽のような飾りが付いていて、服装全体で見れば魔女っ娘。たが天使の羽が生えてるという一見ミスマッチとも取れる服装。でもでも、この子の幼い顔立ちによってそれらは見事な調和を果たし。茶色がかった髪にはカチューシャが付けられ、そこから、最初に私が見た触覚のような髪がピロリと飛び出していた。
「愛いです……」
思わず口に出していた。
先程の上之宮さんが綺麗寄りな可愛いさだとしたら、この子はあれです。プリティ的な、フワキャピファンシー小動物みたいな可愛いさ?
「どしたのひかるっち?」
ハッ?
妄想ブースト全開だった私は、その一言で再び現実へと戻れた。
「えと、どちら様……ですか」
私がそう尋ねると「待ってました!」と言わんばかりの――。
「待ってました♪」
……訂正。私がそう尋ねると「待ってました♪」と叫び。彼女は続けた。
「ボクの名前は天見愛流。(あまみあいる) ひかるっちと同じで、今期の入学者だよ」
ニパっと笑った笑顔が眩しいです。
「アマミさん?」
「同じ一期生なんだからさ、もっと砕けた呼び方にしてよ」
「え~と、アイル、さん?」
「もう一声!」
……値切りですか。
「愛流、ちゃん?」
「うん、オッケー!」
親指を立て、満面の笑みを浮かべ、愛流ちゃんはそう言った。
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