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No.0
非戦闘型アクトロイド
機体名、ルーナァ・ララバイ。
それが私の名前。
アクトロイドって言うのは、いわゆる女性型アンドロイドを示す。
世間一般的にはアンドロイドで通っているから、まあそれで構わないけれど。
私は日本で一番最初のアンドロイド。
私を造り出したのは、日本での、アンドロイド開発第一人者相金瑛徒。
生まれながらの天才と呼ばれ、一流企業の開発室長を勤めるエリート。
でも
それは世間一般の意見。
私から見た瑛徒は、エリートでも天才でもなくて
寂しい一人の男の人だった。
「よく、生まれてきてくれたね」
雪の降る、酷く寒い夜。
私は生まれた。
肩までのワインレッドの髪に、大きめの二重を型どる赤の瞳。
所々コード穴などがあるものの、全体的には人間そのもの。
それが私の姿。
私は研究室の冷たい床を踏みしめて、培養液から出たばかりの冷えた体を震わせる。
すぐに瑛徒は私に毛布をかけ、優しく体を拭いてくれた。
優しい一重の黒瞳に、男性にしては長めの黒髪。
瑛徒の印象は、ひょろりとした背の高い痩せ型だったせいか女性的だった。
培養液対応のドライスーツ越しに感じたその手の温もり。
酷く優しく温かく、私はそれを忘れられない。
研究室には瑛徒しかおらず、説明してくれた話によると、目を覚まさなかった私を、最後まで見捨てなかったのは瑛徒だけだったのだと。
起動させても動作しない私は、瑛徒がいなかったら生まれてさえ来なかった。
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