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深い色の瞳と視線が絡む。
「うちは……」
「お前が何と言おうが、お前は俺の傍に置く。いいな?」
有無を言わせぬ言葉。
それとともに彼の手が離れる。
何故だろう。ひどく寂しく感じられる。
「俺のことは狼王(ロウオウ)と呼べ、雅」
素直に頷く。
傲慢な言葉にも逆らう気は起きない。
とても不思議な心地だ。嫌じゃない。
「おい」
襖が開く。
そこから彼より少し年上に見える少年が彼を見下ろしていた。
「どうした、蓮?」
「あいつが、次のとこ行けって」
「面倒くせぇな」
彼が立ち上がる。
どこかへ行くらしい。
どうすればいいかわからず座っていると、手が差し伸べられる。彼の手。
その手を取るのに迷いはなかった。
きっと、彼に惹かれていたから。
失ったことはまだ許せない。
けどこれは運命で、ここには居場所があるから。
今度こそ、ちゃんと生きていける。
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