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誰もいなかった。
ここに来るように言われていたのに、誰もいない。
また、置いていかれたのだろうか。
役たたずだから……。
何もない岩場の中心で雅(モト)は蹲る。
誰もいなくても、待つしかないから。
でも、やっぱり寂しい。
「誰もおらへんなぁ」
言葉にすると余計虚しいが、残された静寂が嫌だった。
「何をしている?」
不意に聞こえた声に、はっと振り返る。
いつのまにかすぐ後ろにいたその人は、雅より少し大きいくらいの美しい少女だった。
しかし雅は直感で感じる。
少女のように見えるが、彼は少年だと。
「お兄はん、誰?」
「子供がこんな所でどうした?迷子か?」
皆より優しい声音。
撫でてくれる手が気持ちいい。
「うち、皆を待っとるんよ」
「そうか。お前、名前は?」
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