始まりの跡

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「皆は?」 「……いない」 一瞬、手を止めて与えられた言葉がうまく飲み込めない。 『いない』って、何? 「ここ、どこ?」 「知り合いの家」 「お兄はん、誰やの?」 「それは後でな」 また、優しく頭を撫でられる。 その優しさが今はつらい。 「皆んとこ帰りたい」 涙がこぼれて止まらない。 帰りたい。 楽しいことなんてなかったけど、嫌われ者だったけど。あそこだけが自分の帰る場所だ。 「帰りたい」 「なら死ね」 返ってきたのは冷たい言葉。 突然、冷たく突き放される。 彼にも、嫌われてしまったのだろうか。
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