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「あのね、聞きたいことあるんだけど」
「あ、はい」
「アナタ…慎太郎と付き合うの?」
「は?」
「だって、アイツから告白されたんでしょ?」
ななな、何で知ってるんだ、この人!
「あ、別に誰からも聞いてないわよ。何となくわかるでしょ、雰囲気とか。それに慎太郎、最初からアナタの事しか見てなかったし」
う、うそ…す、凄い、何でもお見通しなのかなこの人。
「で、どうなの?」
と聞かれても。て言うか、それってこの人に関係あるのかな?
「他に好きな人でもいるの?」
そう尋ねれらて、ハッとして顔を上げたら物凄い顔で睨まれた。
何もかもを見透かしているその表情が、何を言おうとしているのか、鈍感なあたしでも気づいてしまって思わず血の気が引いた。
「言っとくけど…雅樹はあたしの彼氏だから。少し声かけられたぐらいで、勘違いしないでちょうだい」
そう釘を刺して彼女は、言いたい事を言い終えたのか、踵を返して皆の元へと歩いていった。
あ、ゴミ…捨てなくちゃ。
その背中を送ることなく、あたしはそのままゴミ捨て場へと向かった。
そうして、よくよく考えてみたらあたしはこの日、雅樹クンとろくに話しも出来なかった事に、帰りの電車の中で初めて気がついた。
久しぶりに来た海は、楽しい思い出と驚きの思い出と…そして、最後に苦い思い出をあたしに残したのだった。
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