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薄暗い階段を駆け上り、行き止まりのそのドアの前で立ち止まって、一つ大きく深呼吸。
ドアノブにそっと手を伸ばし、恐る恐る回してみる。
ガチャッ……
静かな空間に木霊するその音に、誰もいないとわかっていてもドキドキと心臓が高鳴る。キィッという鉄の軋む音をさせながら、鋼鉄のドアを開けた瞬間。
ぶわっと涼しげな風が勢いよく全身を通り過ぎ、そして、次に目に飛び込んできたのは……
……――――高く、澄んだ青空。
「うわ~空高い……て、めちゃくちゃ景色、キレイ……」
思わず口からそんな言葉が飛び出てしまうほど、坂の上に建っているこの高校の三階建ての屋上のフェンスの向こうの町並みは、爽快感溢れるすばらしい景観だった。
早朝の眩しい太陽の光を浴びている、コンクリートの無機質な建物と色とりどりの屋根達が、まるでパノラマ写真のように広がっていた。
その景観に惹かれるように、少女は駆け足でフェンスに駆け寄った。
少し強めの風に煽られ、髪の毛とスカートを抑えながら、その場に立ち止まって風が通り過ぎるのを待つ。
春とは言え、この時間はやはり少し肌寒くブルリと身体が震え、髪を押さえていた手で自分を抱きしめるよう、反対側の腕を撫で摩る。
真新しいブレザーの制服の感触が、何だかこそばゆい。
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